臆病な背中で恋をした
 覚悟は決めていたけど、やっぱり亮ちゃんとは顔を合わせることもなく休みに入ってしまって。仕事初めの日は新年会で、真下社長の挨拶が必ずあるらしいから傍にいるだろうし、遠くから眺めるくらいは出来そうだと思う。


「・・・ふう」

 段ボールのホコリを雑巾で拭き取りながら、溜め息が吐いて出る。

 恋人になったというより片恋が始まった心境だ。この先に・・・実るものは何かあるだろうか。未来が描けない。
 でもわたしは亮ちゃんを信じてる。・・・根拠はない。これも上手く言えないけど、亮ちゃんは亮ちゃんな気がするから。ココロを見せてくれなくても。わたしを明里って呼んでくれるから。

 亮ちゃんが必要としてくれる時に、いつでも居てあげられるよう。わたしが扉を開けっぱなしにして待ってればいいんだ。不意にそう思えて。


「・・・待ってる間におばあちゃんになっちゃうかなぁ・・・・・・」

 切なさと苦さが入り混じった笑みが困ったように、ひとりでに零れたのだった。



 
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