臆病な背中で恋をした
4-2
 無事に年が明け。正午前には、お盆以来になったユカも帰って来て、みんなで近くの明神様に初詣に出かけた。

「ナオちゃん! あかりちゃん待ってたら一生結婚できないから、さっさとしちゃった方がいいよー?」

 お賽銭箱の前で熱心に願い事をしてたナオを、ユカが茶化す。

「いやだね。俺は絶対に、今年こそ明里を嫁(い)かせる。長男の使命だからな?」

「えーだってあかりちゃん、彼氏作るトコからじゃん~」

 ムリムリー、とケラケラ笑うかなり失礼な妹。・・・好きな人は、ちゃんといますよーだ!

「まあこういうのは縁だしなぁ」

 わたしに似てのんびり屋のお父さんが呑気に。 

「そういうユカはお目当ての研修医クン、ゲット出来そうなの?」

「それがさー。あかりちゃん聞いてよ、もうっ」

 口を尖らせ、同じ医局の看護師がやたら横ヤリを入れてくると、おかんむりだ。


 久しぶりに家族が揃い、賑やかなお正月。通販で取り寄せたおせちを囲んで、お正月のテレビ番組を肴に笑いが絶えない。
 ユカは明後日の午前中に寮に帰る予定だから、一番元気で朗らかな子がいなくなると、またちょっと寂しくなる。
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