臆病な背中で恋をした
「そう言えば亮ちゃん、今日は買い物にでも来てたの? 同じ電車に乗ってたなんて全然気が付かなかった」

 わたしが感嘆したように言うと。亮ちゃんは何だか居心地の悪そうな表情を浮かべ。

「ああ、まあ。・・・ついでがあってな」

 どことなく歯切れの悪い言い方で顔を背けちゃったから。今度は津田さんにも素朴な疑問をぶつけてみた。

「津田さんも亮ちゃんと一緒だったんですか?」

「・・・まあ。カワイイ子に旅をさせられない日下さんに付き合うのも、俺の仕事なんでね」

「???」

 ちょっとよく分からない淡々とした返答に。よくよくこの人も不思議な人だなぁって。
 その時は、ただそんなことを思っただけだったのだ。

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