臆病な背中で恋をした
 分からない。
 かき乱されて、ぐちゃぐちゃになる。

 近付いてくれたかと思えば。スッと手を引かれ、後退りされてく。なんだかその繰り返し。

 ほんとうに分からない。
 亮ちゃんがどうしたいのか。何を思ってるのか。

 わたしはどうすればいいのか。

 胸の内で必死にもがく、手を伸ばして掴もうと。たった一本の蜘蛛の糸であっても。手離したくない絶対に。


「亮ちゃんが好きなの・・・。もう戻れないの。だから、わたしを置いていこうとしないで・・・亮ちゃん・・・・・・」

 亮ちゃんをこんなにも失くしたくないことしか。今のわたしには分からないから。
 コートを掴んで握り締める指が白むほど力が籠って。・・・声が震えた。
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