臆病な背中で恋をした
「手塚さん、一緒にゴハンどお?」
9時始業、6時終業。取りあえず何事もなく一日が終わって。ほっとしながらロッカールームで着替えていたら声を掛けてくれたのは、同じ不動産事業部の初野(はつの)さんと、三好(みよし)さんだ。
2人ともわたしの2つ上の先輩で、時々こうして夕飯に誘ってくれる。それほど親密ってわけでもないけど付き合いは大事。中途採用の新人に気を遣ってくれるってだけでも、良心的なヒト達だ。
「あ、はい。行きます」
笑顔を見せると満足そうな表情が返った。
駅近くの居酒屋ダイニングで、適当に好きなモノを頼みシェアしながら、いわゆる女子会の始まり。
「あのハゲ、相っ変わらず仕事回すの遅いよねぇ!」
「あれじゃ伊藤さんの契約に間に合わないっつの」
課長の陰口やら色んなミサイルが飛び出すけど、さすがに自分の立場じゃ相槌を打つのが精一杯。その内にやっぱり話題は、どこの部の誰がカッコイイとか、誰と誰がデキてるとか。
「あたしはブレずに日下室長一筋だよぉ?」
初野さんの言葉にドキッとする。
「あのひと、見てる分にはいいよね。氷の王子サマ」
三好さんがライスコロッケを口に放り込んで、向かいに座ったわたしにニンマリする。
「手塚さんはどう思う、日下室長!」
「そ、ですね、ちょっと近寄りがたい雰囲気っていうか・・・」
「それそれ! なーんかオーラ出してるもんね、こう」
少し思ったままを口に出してみたものの。亮ちゃんの話題は正直、心地悪くて仕方ない。
前はあんな風じゃなかった。・・・って。教えてあげたくなるのを飲み込んでは。
「そー言えばウチの社長も結婚しないよねぇ。わりと野獣系って聴いたから、遊び倒してんのかもね」
「そのうち隠し子とか出てきそう」
「日下室長も、本気で女と付き合うタイプに見えないしねー」
「そっちの方が出てきそうじゃん!」
「やめてよ、あたしの夢こわさないで~っ」
ヤメテ。
わたしの亮ちゃんをみんなでコワサナイデ。
胸の奥底で悲しくて悔しい悲鳴を上げながら。
貼り付けた笑顔で。早く終わればいいのにと、ただ思うばかりだった。
9時始業、6時終業。取りあえず何事もなく一日が終わって。ほっとしながらロッカールームで着替えていたら声を掛けてくれたのは、同じ不動産事業部の初野(はつの)さんと、三好(みよし)さんだ。
2人ともわたしの2つ上の先輩で、時々こうして夕飯に誘ってくれる。それほど親密ってわけでもないけど付き合いは大事。中途採用の新人に気を遣ってくれるってだけでも、良心的なヒト達だ。
「あ、はい。行きます」
笑顔を見せると満足そうな表情が返った。
駅近くの居酒屋ダイニングで、適当に好きなモノを頼みシェアしながら、いわゆる女子会の始まり。
「あのハゲ、相っ変わらず仕事回すの遅いよねぇ!」
「あれじゃ伊藤さんの契約に間に合わないっつの」
課長の陰口やら色んなミサイルが飛び出すけど、さすがに自分の立場じゃ相槌を打つのが精一杯。その内にやっぱり話題は、どこの部の誰がカッコイイとか、誰と誰がデキてるとか。
「あたしはブレずに日下室長一筋だよぉ?」
初野さんの言葉にドキッとする。
「あのひと、見てる分にはいいよね。氷の王子サマ」
三好さんがライスコロッケを口に放り込んで、向かいに座ったわたしにニンマリする。
「手塚さんはどう思う、日下室長!」
「そ、ですね、ちょっと近寄りがたい雰囲気っていうか・・・」
「それそれ! なーんかオーラ出してるもんね、こう」
少し思ったままを口に出してみたものの。亮ちゃんの話題は正直、心地悪くて仕方ない。
前はあんな風じゃなかった。・・・って。教えてあげたくなるのを飲み込んでは。
「そー言えばウチの社長も結婚しないよねぇ。わりと野獣系って聴いたから、遊び倒してんのかもね」
「そのうち隠し子とか出てきそう」
「日下室長も、本気で女と付き合うタイプに見えないしねー」
「そっちの方が出てきそうじゃん!」
「やめてよ、あたしの夢こわさないで~っ」
ヤメテ。
わたしの亮ちゃんをみんなでコワサナイデ。
胸の奥底で悲しくて悔しい悲鳴を上げながら。
貼り付けた笑顔で。早く終わればいいのにと、ただ思うばかりだった。