臆病な背中で恋をした
「可愛い女だねぇ」
含み笑いの気配に目線を上げる。獲物を捕捉したみたいな強い眼差しとぶつかって、言葉が止まった。
「亮の為なら、白を黒と言おうが、目を瞑って口を噤んでられる女だろうな明里は」
試すと言うより。生殺与奪の権は真下社長の手にしか無いと、喉元に指を掛けられている気がする。
答え次第で・・・息の根を止められる。冗談でもなく、断崖絶壁の上に立たされてるのを感じ取れるのに。不思議と恐怖は湧かなかった。
「亮は俺の片腕だ。このさき地獄の果てまで付き合ってもらうが、お前はどうする?」
口角を上げ、細めた目の奥に孕む抜き身のような鋭気。これきりだと。今、選べと迫る。
この人は。それを問う為に、わざと亮ちゃんを引き離してここに連れて来たのだ。
背中の花は罪。
『・・・明里は来るな』
逸らした眸を歪めて。亮ちゃんはわたしを拒んだ。
どこまでも優しいひと。
わたしが家族を失くしてしまわないよう。闇に埋もれてしまわないよう。
きっとどれかは叶わない。
でも。亮ちゃんが残る。・・・わたしの宝物がちゃんと。それで十分。
だから。
「亮ちゃんと一緒ならどこでもいいです」
当たり前のことのように少しだけ笑って言えた。
ナオは赦さないかなぁ。ユカにも馬鹿って怒られそう。お父さんには黙って頬を叩かれるかもしれない。何より・・・亮ちゃんが一番、傷付く。どれを選んでも後悔なんだろう。家族を取っても、亮ちゃんを取っても。後悔しない巧い方法なんて思い付かないし。
引き算してみたら、わたしがもしいなくなっても、まだナオ達は3人で支え合って生きていける。でも自分から家族を手離した亮ちゃんは1人だから。1+1=2でも、亮ちゃんのほうが足りないなって。
「・・・ならその言葉に嘘は無いと証を立ててみせろ、明里」
社長は目を眇め、無慈悲にも映る冷淡な笑みを口の端に浮かべた。
「亮と俺を裏切らないと、お前は俺にどう証明する?」
含み笑いの気配に目線を上げる。獲物を捕捉したみたいな強い眼差しとぶつかって、言葉が止まった。
「亮の為なら、白を黒と言おうが、目を瞑って口を噤んでられる女だろうな明里は」
試すと言うより。生殺与奪の権は真下社長の手にしか無いと、喉元に指を掛けられている気がする。
答え次第で・・・息の根を止められる。冗談でもなく、断崖絶壁の上に立たされてるのを感じ取れるのに。不思議と恐怖は湧かなかった。
「亮は俺の片腕だ。このさき地獄の果てまで付き合ってもらうが、お前はどうする?」
口角を上げ、細めた目の奥に孕む抜き身のような鋭気。これきりだと。今、選べと迫る。
この人は。それを問う為に、わざと亮ちゃんを引き離してここに連れて来たのだ。
背中の花は罪。
『・・・明里は来るな』
逸らした眸を歪めて。亮ちゃんはわたしを拒んだ。
どこまでも優しいひと。
わたしが家族を失くしてしまわないよう。闇に埋もれてしまわないよう。
きっとどれかは叶わない。
でも。亮ちゃんが残る。・・・わたしの宝物がちゃんと。それで十分。
だから。
「亮ちゃんと一緒ならどこでもいいです」
当たり前のことのように少しだけ笑って言えた。
ナオは赦さないかなぁ。ユカにも馬鹿って怒られそう。お父さんには黙って頬を叩かれるかもしれない。何より・・・亮ちゃんが一番、傷付く。どれを選んでも後悔なんだろう。家族を取っても、亮ちゃんを取っても。後悔しない巧い方法なんて思い付かないし。
引き算してみたら、わたしがもしいなくなっても、まだナオ達は3人で支え合って生きていける。でも自分から家族を手離した亮ちゃんは1人だから。1+1=2でも、亮ちゃんのほうが足りないなって。
「・・・ならその言葉に嘘は無いと証を立ててみせろ、明里」
社長は目を眇め、無慈悲にも映る冷淡な笑みを口の端に浮かべた。
「亮と俺を裏切らないと、お前は俺にどう証明する?」