臆病な背中で恋をした
 見つめる眸には熱っぽさも無く、普段と変わらないように見えた。妹同然のわたしじゃそういう風にはならないのかと、惨めな気持ちが沸いて胸がリアルに傷む。
 悲しくなって思わず顔ごと背けると。身体を起こした亮ちゃんがわたしも引き起こし、乱れた髪を指で梳いてくれる。

「取りあえず着替えろ・・・。明里」

 ・・・・・・やっぱり。
 傷んだ胸にじわりと血が滲んで広がっていく。俯いたまま無言でいたら、頭の上に大きな掌が置かれた。ゆるゆると上げた視線が、少し困ったみたいな眼差しとぶつかり、亮ちゃんは観念したように言葉を繋げる。

「・・・俺のマンションに行く。ここで明里を抱くのは、な」

 場所の問題なのかと不思議そうに目を瞬かせたわたしに。眉を顰め、口許を覆って溜め息を漏らした。

「・・・・・・色々とあるんだ。男には準備ってものが」

「?」

 ・・・そうなの???



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