恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
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星稜王府に無事に帰り着いてから、飛龍はひとり考え込んでいた。無論、鳴鈴を池に落とし、城下街で矢を放った下手人についてである。
城内での事件と城下街での事件の犯人が一緒とは限らない。前者はひとり、後者は複数で襲ってきたようだ。
しかし飛龍の胸は騒いでいた。二つの事件に関連があるのではないかと漠然と感じていた。
(何が目的だ?)
鳴鈴が襲われる理由が、飛龍には思い当たらない。お人よしで人を疑うことを知らない鳴鈴のことだ。他人に恨まれることはないだろう。
純粋すぎて少し空気が読めず、他人をイラつかせることくらいはあるだろうが、殺すほど恨まれるとは考えにくい。
(とすると、やはり俺が原因か)
下手人は飛龍になにかしらの恨みを持っていて、妃である鳴鈴を襲った。そうすることで飛龍に痛手を負わせようとしたのか。
自分が恨まれる……というか、逆恨みされる理由には少々思い当たる節がある。
八人いる兄弟の中で仲がいいのは長兄の皇太子、三弟の李翔、五弟、六弟だ。それ以外の兄弟とは宴で顔を合わせれば挨拶くらいはするが、わかりやすく敵意むき出しの者もいる。