恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「はあ?」
まったく意味がわからないと言った顔で口をぽかんと開ける緑礼。
彼女には、鳴鈴が飛龍を想うだけで幸せという気持ちが理解できない。
逆に鳴鈴には、緑礼が「愛されないなら他に行ってしまえ」と言う気持ちがわかる。自分だって、大切な人が同じようにもがいていたら、そう助言するだろう。
(でも、私は離れられない)
報われなくても、結ばれなくても、飛龍と一緒にいたい。
鳴鈴は強く、念じるように思っていた。
「そんなに好きなら、夜這いでもしてみたらどうですか。ひたすら待ってばかりいないで」
「えっ」
いきなり別の切り口から攻撃してきた緑礼に、今度は鳴鈴が言葉を失った。
「できないでしょう。お嬢さまには、自分から優しく導いてくれる男の人がお似合い──」
「それよ緑礼! どうして今まで思いつかなかったのかしら!」
すっくと鳴鈴は立ち上がった。
いそいそと自分で寝化粧を整え始める鳴鈴を、緑礼は呆気にとられて見つめた。