恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

「俺も、雪花を愛している。兄者、ここは正々堂々と勝負してくれ」

他の皇子たちや雪花本人もいる前でそう言われた宿鵬は、申し出を断ることができない。断れば男としての名誉に関わる。

木刀で手合わせした結果、勝利は飛龍の手に落ちた。宿鵬も悪くはない使い手だったが、飛龍の方がほんの僅か身軽だったのが功を奏した。

「勝ってくださって良かった。私も飛龍さまをお慕いしておりました」

誰もいなくなった場所で、雪花は頬を染めて微笑む。飛龍は彼女をこれ以上なく愛しく思い、強く抱きしめた。

ふたりはめでたく婚約し、あとは華燭の典を待つだけとなる。婚約の証に、飛龍は金と翡翠でできた耳飾りを雪花に贈った。

しかしその頃、崔の西側に接する強国、萩(シュウ)の軍隊が動きだした。

崔の西端にある二つの城を守るため、宿鵬と飛龍はそれぞれ軍を率いて皇城を出ていった。

萩との戦は熾烈を極めた。宿鵬は城を敵軍に奪われ、飛龍は城を守った。

「兄者は何をしているんだ」

さっさと都に敗走した宿鵬の軍は散り散りになり、困った兵士たちが飛龍を頼った。彼は宿鵬軍の兵士を迎え、軍を再編成し、取られた城を攻撃し、奪い返した。

これがふたりの皇子の明暗を分けてしまったのである。

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