恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「そうか。言い方が悪かった。どうも俺は、こういうことが苦手らしい」
大きな手で鳴鈴の髪を撫で、額を付けて飛龍は言った。
「愛している、鳴鈴。これからは遠慮しない」
至近距離で囁かれた甘い言葉に鳴鈴の涙腺は破壊された。
ぽろぽろと涙をこぼしながら、彼女は力いっぱい飛龍の肩に抱きつく。
「殿下、殿下ぁ……」
「よしよし。お前は本当に泣き虫だな」
「だって……私はずっと、殿下をお慕いしてきたんですもの」
「知っている。さっき聞いた」
飛龍も鳴鈴を思い切り抱きしめた。怪我した左手には力が入らないが、彼女の細い体を抱きしめるには右手一本でじゅうぶんだった。