恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

露わになった細い肩から鎖骨に口づけられる。触れられる前から壊れそうなくらいに高鳴っていた胸が、柔らかく包みこまれた。

「殿下……っ」

思わず声を漏らすと、飛龍がしっとりした耳元で囁く。

「名前を呼んでくれないか」

「え……」

「その呼び方も悪くはないが、少し李翔が羨ましい」

宇春は結婚当初から、李翔のことを名前で呼んでいた。鳴鈴もそのことを羨ましいと思ったものだ。

(殿下もそう思ってくれるなら)

少しためらったあとで、おそるおそる口を開く。

「飛龍さま」

「うん」

「飛龍さま……」

「鳴鈴」

優しく名を呼ばれ、鳴鈴の目に涙が浮かんだ。

(やっと、本当の夫婦になれた……)

体が繋がっていようが離れていようが、そんなことは本当はどうでもよかった。

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