恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「案じるな。俺は必ず、お前の元に帰ってくる。お前のいる場所が、俺の帰る場所だ」
強く握る手の熱さを感じ、鳴鈴は必死にうなずいた。
彼はきっと、無事に帰ってくる。それまでは元気で、彼の帰る場所を守っておかなければ。
「徐妃さまは必ず俺たちが無事に送り届けます。安心してください」
いつのまにか近くにいた李翔が飛龍に声をかける。
鳴鈴はこのまま皇城にいることよりも、星稜に帰ることを選んだ。主のいない星稜を放ったらかしにしておくことはできない。
未熟でも、鳴鈴は星稜王飛龍の妃だ。彼の代わりに、星稜の地を治め、見守る義務がある。
「頼んだぞ、李翔。鄭妃、好きな時に好きなだけ、星稜に滞在してくれ。鳴鈴も喜ぶ」
「ありがとうございます、殿下。そうさせていただきますわ」
笑顔を作った宇春に肩を抱かれ、鳴鈴はやっと飛龍から離れた。その頼りない手を、緑礼が横から握る。
「存外、お前には味方がたくさんいるようだ」
飛龍は鳴鈴たちを見て微笑んだ。
「星稜王殿下、そろそろお時間です」
後ろから兵士が近づいてきてそう囁いた。飛龍はうなずき、ひらりと愛馬に跨る。
「出陣せよ!」