恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
翌日。ひとりきり残された鳴鈴は、早朝からがらんとした広い部屋で荷造りをしていた。
飛龍の側近ふたりは一緒についていったので、鳴鈴は緑礼と、わずかな星稜の兵士たちと帰ることになっている。今日の午前中には出発する予定だ。
飛龍やその側近がいないのでは心細いだろうと、李翔が王府まで送ってくれることになっていた。
飛龍は戦を終えたら一旦皇城に帰ってくる予定だ。そのときは当然連絡をもらうことになっている。
「さて、大体できたかしら」
星稜王府を出てくるときも急だったので、それほどたくさんの荷物はない。
「最後に翠蝶徳妃さまにお会いしておかなきゃね」
「主上へのご挨拶も忘れずに」
緑礼に言われ、鳴鈴はため息をついた。
皇帝は最初から緊張して当然の相手だったが、今回のような強引なところを見てしまうと、ますます近寄りがたく感じてしまう。
いつもは飛龍が傍にいてくれた。しかし今は、鳴鈴ひとりだ。
(飛龍さまにどれだけ助けられていたか、今頃になって痛感しても遅いわね)
妃を抱いてくれない、素っ気ない夫だと思っていたけど、よく考えてみれば飛龍は最初から鳴鈴を守りつづけていた。
彼のことを思い出してしんみりしていると、緑礼が言った。