恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「あなたは優しい子だから、きっと飛龍とうまくやってくれると思って。ほらこの人、愛想もへったくれもないでしょう?」
たしかに……。そう言えばあの夜も、必要最低限のセリフしか喋らなかったことを思い出す鳴鈴。
でも、いいのだ。あの夜以来、恋焦がれた相手が目の前に現れてくれたのだから。
窮地に陥っている自分を助けてくれた。あんなにたくさんの賊に怯むことなく、ひとりで立ち向かった。
そんな飛龍が、変態なわけがない。きっと、優しいけれど不器用なだけなんだ。ずっと一緒にいれば、いつかわかりあえるはず。
全てを前向きに考えた鳴鈴は、きっぱりと言った。
「私でよろしければ、喜んで星稜王さまに侍ります」
それを聞き、翠蝶徳妃の顔が朝陽を受けた花のように輝く。
「ねえ聞いた? 飛龍。こんなに若くて可憐なお嬢さんがあなたの妃になってくれるのよ!」
はしゃぐ翠蝶徳妃の横でびしっと背を伸ばす鳴鈴。
「……俺は妃を娶る気はありません。何度言わせるのですか」
むっつり顔の飛龍の容赦ない言葉が、鳴鈴の胸を直撃した。