恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「馬仁の仲間の盗賊です。星稜王殿下を襲ったことのある彼らは、皇后陛下から下賜されたものを大量に持っています。武器、衣服、馬、食料……すべて皇后陛下に援助を受けたと自白しました。これらから当たっていけば、皇后陛下に辿り着くでしょう」
緑礼は飛龍に封書を差し出す。その中には皇后が部下に書かせたと思われる密書が。もちろん、飛龍や鳴鈴の暗殺を要求している内容だ。飛龍の手から、それは皇帝に差し出された。
「何を言うのです。陛下、騙されてはいけません。ひどい中傷です」
武皇后は袖で顔を覆って泣きだした。
「何がなんだかわからん。もっと確たる証拠はないのか。無実の罪で皇后を侮辱したとあれば、お前とてただではすまんぞ」
雷が落ちるような皇帝の怒号に、広場が静まりかえる。そこに、ひとりの男が現れた。
「もうやめましょう、母上」
憔悴しきった様子の男は、皇太子だった。皇帝の後ろから飛龍たちの前に現れた彼は、母親を庇うように立った。
「陛下、すべては私のふがいなさのせいです。母上は私の地位を確固たるものにしようと、私より優れた飛龍を殺そうとしました」