恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「あなた、何を……」
「もうやめてください、母上。自分のせいで人が死んでいくのを、私はもう見たくないのです!」
振り向いた皇太子に肩をつかんで揺さぶられ、皇后の金歩揺がしゃらしゃらと音を立てる。彼女の顔がまた人形のように凍り付いていった。
「なんということだ。皇族殺しは、下手人の一族を殲滅せねばならんぞ。偽りならば、今すぐ発言を撤回しろ」
動揺を押さえたような皇帝の声が響く。鳴鈴は思わず顔を上げてしまった。
(また、梁家のような悲劇が繰り返されてしまうの?)
皇太子は「真実です」と短く言った。息子に懇願され、皇后も罪を認めるように黙ってしまった。
そのときだった。鳴鈴の横にいる飛龍が颯爽と立ち上がる。
「その必要はありません。この通り、私は生きております」
「だが、未遂であっても、この法は適用されるのであって」
皇帝が言い終わらないうちに、飛龍は首を横に振った。
「雪花のときのような悲劇はもうごめんです。法には解釈の余地というものがあるはず。どうか、御温情を」
誰よりもその法の残酷さを知っている飛龍の低い声が、その場にいた者たちを黙らせた。
しばらく続いた沈黙を破ったのは、皇帝だった。