恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「……わかった、彼らの処分についてはよく考えてからとしよう」
すぐに結論は出さず、皇帝は彼らをひとまず幽閉するように指示した。
兵士たちが彼らに縄をかけ、牢獄へと連行していく。皇后はうなだれていたが、皇太子は背筋を伸ばし、しっかりとした歩調で歩いていった。
(きっと、覚悟していたんだわ)
皇太子はあのとき、転んだ鳴鈴の姿をたしかに見たはずだった。すぐに追手を差し向けて捕えることもできたはずだ。だけど、それをしなかった。
皇后は卑劣極まりない許せない悪党だけど、皇太子はそうではなかった。
優しすぎる性格ゆえ、鳴鈴を捕えられなかった。母親と共に罰を受ける覚悟をしていたのだ。
鳴鈴は静かに、皇太子の背中を見送った。
彼の勇気が無駄になりませんように。梁家のような悲劇が繰り返されませんように。
彼女はそっと、飛龍の手を握る。飛龍もまた、彼女の手を握り返した。ふたり一緒に、何かに祈るように。