恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
額から頭頂部を覆う黄金の鳳冠(ホウカン)を着け、真紅の空に金の鳳凰が舞う花嫁衣装を身に付けた鳴鈴は、またまた卒倒しそうになった。
同じように金の冠と真紅の衣装を身に付けた飛龍の姿が、信じられないくらい神々しかったからだ。
いつも流している後ろ髪も、今日はきっちりと結い上げられていた。
(あああ……なんて素晴らしいの。のぼせてしまいそう)
星稜王府で催される婚礼には、皇帝やその妃たち、皇子たち、鳴鈴の実家の家族、その他有力貴族が参列している。
緊張していた鳴鈴だが、飛龍の姿を見て余計に胸が高鳴ってしまう。
「お似合いですわ、殿下。まるで鳳凰が人の姿になって降り立ったような神々しさです」
震える声で褒めた鳴鈴を、飛龍は頭からつま先までじっと見つめた。
鳴鈴は思わず期待する。飛龍の口から、花嫁衣装を褒めてもらうのを。しかし。
「殿下、徐妃さま。準備が整いました。こちらへ」
向家の側仕えがやってきて、飛龍は開きかけた口を閉ざしてしまった。
(まあ、まあ……今から儀式の本番だもの、仕方ないわよ。終わってから、ゆっくりお話できるわ)