恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

名案だと思って声を張りあげたが、飛龍が目をぱちくりするのを見て、自分の言ったことをよく考えた。

一瞬ののち、彼女は盛大に赤面した。

「いえあの、まだひとりも生めるかわからないのに……すみません、今のは忘れてください」

うつむいた鳴鈴のあごが、長い指に捕らわれる。

上を向かされた彼女が見たのは、薄く笑う夫の美しい顔だった。

「いや、忘れない。心に刻んだぞ、鳴鈴」

「あの……?」

「よし、わかった覚悟を決めよう。どうせ逃げられやしない。どんな地位になっても俺らしくやるだけだ。お前は俺についてこい」

ぎゅっと抱きしめられたかと思うと、飛龍は背中から牀榻に倒れ込んだ。鳴鈴はその上に乗せられてしまう。

「誰がなんと言おうと、俺の妃はお前一人だ。お前がいてくれれば、何でもできそうな気がしてくる」

彼の長い指が、鳴鈴の赤く色づく唇を撫でる。

「だから……俺の子を生め。なるべく、たくさんな」

口付けられたと思ったら、突如視界が反転した。いつの間にか、飛龍が自分の上に馬乗りになっていた。

あわあわする鳴鈴の帯を素早くほどき、邪魔な髪飾りを外していく飛龍の手は、すっかり怪我をする以前の動きを取り戻していた。

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