恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
☆おまけ的番外編☆

飛龍が立太子されてから三年後。彼は順調に皇帝の位を父から譲られた。

それから二年後、冕冠がすっかり似合うようになった彼の膝には、二歳の娘が座っている。

目の前の庭では、四歳になる皇子が元気に蝶を追いかけていた。その後ろで、鳴鈴が「池に落ちないでよー!」と気を揉んでいる。

「とうさま、はいどうじょー」

娘が飛龍を見上げ、庭でとってきた細い木の枝と小石を渡してくる。

「これはなんだ?」

「ごはんですよー」

「鳴琴(メイキン)が作ったのか?」

「しょうよー」

「そうよ」が言えなくて「しょうよー」になっている。

(なんだそれは! 可愛すぎか!)

飛龍は熱くなる顔を自らの手の平で押さえた。

見下ろした娘のほっぺたが膨らんでいる。まだ小さな歯しか生えていない口先が少し尖って見えた。それがまた可愛い。

「ああ、おいしい。おいしいなあ」

娘に渡された小石を食べるフリをしていると、大きな水音と皇子の悲鳴が聞こえた。

「ぎゃー!」

あれだけ気をつけろと言われていたにも関わらず、池に落ちたらしい。飛龍が娘を抱いて立ち上がるが、皇子は周りについていた侍女たちにすぐ引き上げられていた。

< 244 / 249 >

この作品をシェア

pagetop