恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
☆おまけ的番外編☆
飛龍が立太子されてから三年後。彼は順調に皇帝の位を父から譲られた。
それから二年後、冕冠がすっかり似合うようになった彼の膝には、二歳の娘が座っている。
目の前の庭では、四歳になる皇子が元気に蝶を追いかけていた。その後ろで、鳴鈴が「池に落ちないでよー!」と気を揉んでいる。
「とうさま、はいどうじょー」
娘が飛龍を見上げ、庭でとってきた細い木の枝と小石を渡してくる。
「これはなんだ?」
「ごはんですよー」
「鳴琴(メイキン)が作ったのか?」
「しょうよー」
「そうよ」が言えなくて「しょうよー」になっている。
(なんだそれは! 可愛すぎか!)
飛龍は熱くなる顔を自らの手の平で押さえた。
見下ろした娘のほっぺたが膨らんでいる。まだ小さな歯しか生えていない口先が少し尖って見えた。それがまた可愛い。
「ああ、おいしい。おいしいなあ」
娘に渡された小石を食べるフリをしていると、大きな水音と皇子の悲鳴が聞こえた。
「ぎゃー!」
あれだけ気をつけろと言われていたにも関わらず、池に落ちたらしい。飛龍が娘を抱いて立ち上がるが、皇子は周りについていた侍女たちにすぐ引き上げられていた。