恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「もう、何やってるの」
鳴鈴が呆れた顔で、皇子の着物を脱がせる。
(自分だって、溜池に落ちたくせに)
すっかり慣れた手つきで子供の着替えをさせる鳴鈴を、飛龍は感心して見ていた。
子供が生まれるまでは、自分の帯さえまともに結べなかった娘が、成長したものだ。
もともと少女のような見た目の彼女は、今でも実年齢よりずっと若く見える。
出会ったころと変わったのは、痩せすぎていた体か。今は全体的にうっすらと肉がつき、胸には谷間ができるように。
「あぎゃー」
「おぎゃー」
皇子を着替えさせたと思ったら、次は赤子の鳴き声二重奏が飛龍の傍から噴出した。
廊下に置かれたゆりかごの中にいるのは、双子の赤子だ。今年生まれたその双子を合わせ、飛龍の子は合計四人に。
「はいはい、なにかな。おっぱいかな、おしっこかな」
鳴鈴は小走りで双子の元に駆け寄る。自分の子は乳母任せにせず、自分で育てると言い張っていた鳴鈴だが、双子が生まれ、そうも言っていられなくなった。
一緒に面倒をみてくれる乳母の指導を受けながら奮闘する鳴鈴を、飛龍は頼もしく思っていた。
(こんなに可愛い子供たちに恵まれて、俺は果報者だ)
そうやって飛龍が幸せを噛みしめていたある日。とうとう鳴鈴は熱を出して倒れた。