恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「どういうことですか、それは」
「えっ?」
「なんてひどいことをおっしゃるのです」
そう言い、鳴鈴はさめざめ泣きだした。ひどいことを言った自覚のない飛龍は面食らう。
「私はあなたの妃です。皇后なのです」
「わかっている」
「わかってません! あなたは最近、子供たちに夢中で、私のことなんてちっとも見てくださらない」
……ん? 話がおかしな方に行ってないか?
首を傾げた飛龍は、鳴鈴の言葉にじっと耳を傾ける。
「いつまでも飛龍さまに女として見てほしいから、自分を磨きたいのです。それを不要とおっしゃるのは、もう私に興味がないと言っているようなものです」
「そんなこと言っていない」
「たまには、私のことを見てください。誰かの母親じゃなく、ひとりの女性として。あなたの妃として」
しくしくと泣く鳴鈴は、十八の頃と何も変わっていなかった。
(こいつに泣かれるのは、苦手だ)
飛龍はそっと鳴鈴を抱き寄せる。彼女は抵抗せず、彼の胸にすり寄った。
彼女の体を抱き、たしかに双子が生まれてから、二人の時間が少なくなった。いや、皆無だったかもしれない。飛龍はそう気づいた。