恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
内心ものすごくがっかりしたまま、鳴鈴は婚礼の儀式に挑んだ。
いつもはおっちょこちょいな鳴鈴も、今日ばかりは失敗するわけにはいかない。
「二兄(ニケイ)もやっと結婚か。よかったよかった」
「しかもあんなに若い妃をもらえるなんて。今夜から楽しいでしょうね」
「だけど俺、二兄が幼女趣味だとは知らなかったなー」
儀式中にも関わらず、背後でこそこそと私語を囁き合うのは皇子たちだ。鳴鈴からは見えなかったが、第二皇子を「二兄」と呼べるのは皇子たちしかいない。
(違う。私は幼女じゃなーい!)
皇子たちに叫びたい鳴鈴だったが、なんとか儀式に集中し、無事に終えることに成功した。
その夜。
鳴鈴はひとりで、所在無げに座っていた。
婚礼の儀式を終え、今からいよいよ初夜である。
先に準備を終えて洞房(ドウボウ)で待っていた鳴鈴の心臓は、もう爆発寸前だった。
いつも話し相手になってくれる緑礼もいない。緑礼は鳴鈴の側仕えとして一緒に向家に仕えることになったが、さすがに新婚夫婦の閨までは入ってこられない。
緊張が頂点に達したとき、洞房の扉が開いた。白い初夜装束を着た飛龍が現れたのだ。