恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

あんなに恋焦がれた初恋の人との初夜で、背中を向けられてしまった。

ずっと触れたかった広い背中が今は憎らしい。

鳴鈴は静かに泣いた。ぽろぽろと、ただ涙をこぼすことしかできなかった。

こんなに惨めな花嫁が、他にいるだろうか。

悪い方へ考え出すと、どんどんと涙が溢れてくる。

(まだ結婚したばかりだもん。男の人だって緊張するわ。今後一度も抱いてもらえないわけじゃない。きっと、そのうち、仲良くなれるはず。本当の夫婦に……)

無理やり気持ちを切り替え、褥の中に戻る。

鳴鈴はそっと、飛龍の背中に寄り添った。

彼の温かさを布越しに感じると、どうしてか、また涙が出てくる。

(拭いてやる。涙も鼻水も、殿下の背中で拭いてやるんだからー!)

鳴鈴はぎゅうと飛龍の背中に顔を押し付けた。化粧が転写されたって知らない。花嫁を放って寝る方が悪いに決まっている。

体は疲れているし、ひどく緊張した心が緩んだ。その隙に襲ってきた睡魔に支配された鳴鈴は、飛龍にくっついたままぐっすりと眠りこけてしまったのだった。

< 28 / 249 >

この作品をシェア

pagetop