恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
しかし、重陽節の宴で会った鳴鈴は、初対面のときとはだいぶ印象が違っていた。髪型や化粧のせいか、衣装のせいか、ちゃんと十八に見えた。
顔に力を入れていないと、思わず微笑んでしまいそうなほどの可憐さだった。彼女を腕で抱きとめたとき、天女が舞い降りてきたような気さえした。
自分の妃になると断言した、大きな目をした娘の花嫁姿がまぶたの裏によみがえる。
赤い衣装の内から発光しているかのような白い肌。鳳冠を着けた彼女の小さな玉顔をまっすぐ見ることができなかった。歳をとった自分には眩しすぎた。
(可哀想に……自分では気づいていないだろうが、じゅうぶん魅力的な娘だというのに)
鳴鈴には申し訳ないが、自分には彼女を抱いてやることはできない。
身体的に問題があるわけでも、ましてや男色家でもない。
同じ褥に入っていて、何も感じないこともない。鳴鈴が隣にいると思うと、ざわざわと胸が騒ぐ。
きっと鳴鈴は、自分が飛龍に嫌われていると思って泣いているのだろう。その上、女性としての矜持を傷つけられたに違いない。
(そうじゃないんだ、鳴鈴。お前が悪いわけじゃない。悪いのは、全部俺だ)
飛龍は痛む心を鬼にして、寝たふりを続けた。