恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
起き上がって頭を撫で、口付けて……帯をほどき、その白い肌に触れてやれば、新郎の義務は果たせる。鳴鈴の心は楽になることだろう。
一瞬そうした方がいいのかと心が揺らぐが、必死で自分を抑えつける。
(寝ろ、寝るんだ鳴鈴)
呪文のように心の中で呟いていると、やっと鳴鈴が褥に横たわる気配が背後でした。
ほっとしたのもつかの間。鳴鈴が自分の背中に寄り添ってきたのを感じ、飛龍は心の中で悲鳴を上げた。
(やめてくれ。柔らかい体を俺に押し付けるな。細い指で背中をなぞるな!)
じっと耐えていた飛龍だったが、すぐに自分の背中がしっとりしてきたことに気づく。
鳴鈴の涙が染みてきたのだと思うと、心の底から申し訳なくなった。
抱いてはやれないけれど、なるべく鳴鈴が心安らかに過ごせるようにしなくては。
背中に妃となった娘のぬくもりを感じながら、飛龍は深く息を吐いた。