恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
『そう、よかった。吉報を待っているわね』
それはつまり、自分が飛龍の子を腹に宿すことを楽しみにしている、ということだろう。
皇帝に挨拶したときも、同じようなことを言われた。皇子の妃たちは、自分がいかに夫に臥所(フシド)で愛されているかを披露し、競い合っている。
いたたまれなくなってその場から抜け出した鳴鈴は、緑礼と寒い庭をのろのろと散歩するしかなかった。
(そのうち、私が愛されていないということが他の妃に知られてしまう……)
飛龍は嘘を吐く性格ではない。皇子たちに閨のことを聞かれれば、あっさり正直に答えてしまうだろう。
「お妃さま、温かいお茶でも用意しましょう」
惨めさに支配されそうになった鳴鈴に優しく声をかけてくれるのは、緑礼だ。
「うん、ありがとう」
仕方ない。もともと、飛龍にとっては望んでした結婚ではなかったのだ。無条件で自分を受け入れてほしいと思うのは、わがままだろう。
鳴鈴はとぼとぼと、居所のない皇城を歩き回ったのだった。