恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

そんなふうにウツウツした毎日を送っていたものだから、二月のある日、鳴鈴は王府で倒れてしまった。

最初は咳だった。なかなか止まらないなと思っていたら、頭痛がして、体に力が入らなくなった。鳴鈴が訴えなかったから、朝の支度をした侍女たちは何も気づかなかった。

星稜王府はもともと皇城の北にあり、鳴鈴が住んでいた皇都とは違って雪が降る日も多い。

(それにしても今日はやけに冷えるなあ──あれ、震えが止まらない──)

髪飾りも付けたままで床にぱったりと臥せっていた鳴鈴を発見したのは、緑礼だった。

「私も我慢の限界です。星稜王殿下にひとこと申し上げましょう」

日頃からの心痛が、鳴鈴の体力を奪い、病に罹らせたのだと決めつけている緑礼は激昂した。

「ただの風邪よ。大丈夫」

褥に横たわった鳴鈴は、力なく微笑んだ。

「殿下のせいじゃないわ。ほら、翠蝶徳妃さまだって御子には恵まれなかったけど、主上に愛されて幸せに暮らしていらっしゃるでしょう? あの方のように、強くならなくてはいけないわ……私が弱すぎるのよ」

どんよりしている妃に近づきたい夫はいない。なるべく微笑んで、前向き思考でいよう。そうしたら、いつかは仲良くなれる。鳴鈴はそう考えていた。

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