恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「熱が高いな」
思わずまぶたを開けた鳴鈴は、意識を失いそうになった。
恋焦がれる夫の秀麗な顔が目の前にある。彼が話せば、吐息が唇にかかった。
「薬は飲んだのか?」
くらくらしている鳴鈴からすっと離れ、飛龍が尋ねる。返事をする前に、枕元に置いてある盆を見つけられた。置いてある杯には、ほとんど残っている液体の飲み薬が。
「飲んでいないじゃないか」
「だって、苦くて……」
せっかく薬師が用意してくれたものだが、苦すぎて飲めなかった。恥ずかしくて手で顔を隠す鳴鈴の上で、飛龍がため息をついた。
「お前は女主人の臥所にまで入り込むくせに、薬も飲ませられないのか」
痛烈に言われ、緑礼の頬に朱が走る。
「なっ」
「ふたりそろって子供だな。いい、俺がやる」
飛龍はそう言うと、鳴鈴の上体を抱き起す。何をするのかと思えば、突然鼻を強くつままれた。
「ふがっ」
「いいか、こうすれば相手は口を開くしかなくなる。敵に毒を飲ませるときの手段だ」
きりっとした表情で教える飛龍に、緑礼は思わずツッコんだ。