恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
でも、せっかく部屋を訪ねてくれたのだ。自分を抱くためでなくてもいい。病に臥せっていると知り、顔を見にきてくれた。それだけでも、鳴鈴はじゅうぶん嬉しかった。
「せめて、私が眠るまで……」
夜まで傍にいてとは言わない。ただ、もう少しだけ一緒にいたい。
「……仕方ない」
どすんと、飛龍が牀榻の傍にあった椅子に腰を下ろした。つかまれていた袖から鳴鈴の手を放させる。
小さな手を、大きな手が包みこんだ。鳴鈴はそれだけで、幸せで胸がいっぱいになる。
(手を繋いでくださった……)
硬い剣ダコができている大きな手は厚く、とても温かい。
少しでも起きていたいが、薬が効いてきて体が楽になった途端、急にまぶたが重くなる。
鳴鈴は飛龍と結婚してから初めて、幸せな気分で眠りについたのだった。