恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
参・出陣命令
二月。
崔の北にある星稜は、ますます厳しい寒さに包まれていた。
ある日鳴鈴が火鉢で手を温めていると、飛龍が部屋を訪ねてきた。
「殿下!」
鳴鈴は喜び、文字通り飛び上がる。
あの風邪の日以来、飛龍は一日一度、鳴鈴の部屋を訪ねてくれるようになった。
相変わらず共寝をすることはないが、一緒に食事をしたり、囲碁をするようになった。それだけでも大した進歩だ。
「俺は今から出かけるが、お前も来るか?」
よほど寒いところに行くのか、飛龍は毛皮のついた外套を纏い、襟巻まで着けている。
皇都出身の鳴鈴は、寒さに弱い。けれど、断ったら二度と誘ってもらえないような気がして勢いよくうなずいた。
「また風邪をひかないよう、準備万端にしてこい」
「では、私の衣をお貸ししましょう」
緑礼が立ち上がる。そうして鳴鈴は緑礼の胡服を借り、飛龍と同じような毛皮のついた外套を着こんだ。