恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「過酷な仕事だわ」
こんな山奥で冬を越すのは、辛いだろう。眺望台に立つ兵士はさることながら、その身の周りの世話をする女房たちは手をあかぎれだらけにしているに違いない。
「そうだな。でも、たくましいものだ」
飛龍が視線を送った先には、そりを引いてうんしょうんしょと丘を登ってくる子供たちが。毛皮でできた帽子を被ったその子たちの頬は真っ赤で、まるで林檎のよう。
「あれ、楽しいのかしら」
鳴鈴は興味津々で子供たちに近づいていく。そのあとを飛龍と緑礼がくっついてきた。
「こんにちは」
鳴鈴が声をかけると、子供たちは恥ずかしそうにもじもじして、お辞儀をした。
「おうさま、こんにちは」
「おきさきさま、こんにちは」
いつもこうして挨拶をしているのだろう。王だからといって威張らず気取らない飛龍の人柄が見えた気がして、嬉しく思った。しかも、最近結婚した鳴鈴のことまで知ってくれている。
「挨拶できて偉いな、お前たち」
飛龍が頭をなでると、子供たちは笑顔を見せた。
「ねえ、私にそれを貸してくれない?」
そりを指さす鳴鈴に、緑礼が眉を吊り上げた。
「何をなさるおつもりですか、お妃さま」
「何って……そりよ。楽しそうじゃない」