あなたで溢れている

泥酔状態の女性にも見覚えがあった。
英里奈の職場の人だ。

「大丈夫?」

英里奈が聞き、頷いたのを確認して、とめたタクシーに乗り込ませた。

「英里奈ちゃんがザルで良かったよ〜」

夏井が意地悪く言う。
確かに英里奈はザルだけども、失礼だ。

「夏井君ありがとうね…あ…修も…ありがと」

目を合わせないで英里奈が言った。

「修也く〜んどこ〜?ね〜」

の声に俺が振り向く。
あ、荷物‼︎
置きっぱだったのを思い出した。
取りに行こうと考えていたら、英里奈がペコっと頭を下げて歩き出した。

「…ばっ‼︎ ちょっ、待て‼︎ こんな時間に1人で帰んな‼︎」

俺の声は届かないのか、英里奈がズンズンと歩いていった。
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