朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「? 流夜くん?」


「どうかした?」
 

在義父さんとマナさん、双方から声をかけられて、はっと意識を取り戻したようだった。


「すみません、在義さん。愛子抜きで状況確認したいので、少し娘さんと話をさせてもらってもいいですか?」


「咲桜と? 構わないけど……片腕を折られる覚悟はあるかい?」


「俺は何をしたんですか」
 

真剣な目の在義父さんを、平坦な瞳で見返している。


「まーまー華取先輩。これはあれですよ、お若い者同士でにふふ、みたいな。ロビーに行きましょうよ」
 

何やら見合いの仕掛ける側に願望を持っているらしいマナさんは、提言に反対せずに在義父さんを引っ張って行ってしまった。
 

マナさんの足音が消えたのを確認するように間を置いてから、『りゅうやくん』は眼鏡のない瞳を咲桜に向けた。

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