朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


華取の素直な感想には同意するが、しかし否定もしておかなければいけないだろう。


「在義さんとは違う。吹雪は行動原理が面白いことなら、で、行動理由は面白そうだから、だ。在義さんと並べるととんだ失礼になるからしない方がいい」


「……どんな方ですか」
 

華取の声が平坦に聞こえた。
 

あまり一般常識をあてはめてはいけない方だ。


「そういう奴だ。基本、人をからかいしかしないから、華取も、あいつが言うことは本気にしない方がいいい」


「……肯いていいのかわからないですけど、わかりました」
 

話しながら歩いているうちに、街角の喫茶店に着いた。


外観は壁に煉瓦が埋め込まれている造りで、看板はない。


店の名前は《白》だけど、それが伺えるものは一つもない。


龍さんは、あくまでここを同業者が使う場所としているから、仲間連中に通じればいいのだ。


「華取、入らないのか?」

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