朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】
車に乗り込んで、思いっきり深く息を吐いた。
在義さんに睨まれることを重ねてしまった……。
それでもさっき、華取と一緒にいてよかったと思う。
華取が……泣いてくれてよかったと思う。
やっぱり華取は自分を押し殺してがんばっていた。
生きていることをゆるしてもらうために。
「……そんなの、俺がいくらでも支えてやるのに」
頼ってくれたら、いつだって華取の味方でいるのに。
でもそれは、きっと教師の領分ではないところまで感情がある。
領分ではないそこまで、俺は華取に踏み入ってしまった。
「………」
この際だ。愛子が敷いてくれた『偽婚約者』の位置――思いっきり利用させてもらおうじゃないか。