朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


急に話を振られて一瞬間の抜けた顔をした笑満だけど、すぐに人を喰ったように返した。


先生はふっと笑みを浮かべる。


「じゃあ、もらおうか」


「先生⁉」
 

またもや飛び出したとんでも発言に、私は驚きのあまり同じ言葉しか返せない。


何言ってんのこの人たち⁉


「お、いいですねー。あたしそっちの先生のノリすきですよ」
 

しかし笑満は先生と話が合うのか、楽しそうだ。


だからなに言ってんだこいつら!
 

――それが起きたのは、どちらの口から塞ぐか、一瞬思案している間のことだった。


「へー、華取咲桜が神宮の見合い相手だったんだー」
 

カタン、と音がして、資料室の奥にある、隣の部屋と繋がっている扉が開いた。


そこにいたのは男子生徒――藤城主席と称される、夏島遙音先輩だった。


「……!」
 

私は一気に蒼ざめる。


き、聞かれた……⁉ い、今、私が先生のお見合い相手、って言ったよね……?
 

固まったのは笑満も同じだった。


さっきまで饒舌だったのが、驚いているせいか口を結んでしまっている。


「何しにきた、遙音」
 

――え?

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