朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


全然慌てていない先生の様子に、また驚く。


そんな落ち着いている場合じゃないですよ!


けど今、『遙音』って名前で呼んだ……?


「冷てーな、神宮。俺だって誰に告げ口するわけじゃないんだから、話してくれてよかったのに」
 

夏島先輩は資料室に足を踏み入れ、先生の机に手をついた。


その間、私も笑満も動けなかった。


「お前に言ったら降渡や吹雪に筒抜けになるじゃないか」


「あ? あいつらには言ってねーの?」


「………」
 

先生が黙った。


言わなくても知られる、って言っていた二人って、昨日逢った吹雪さんと降渡さんのことだったの?


「えーと、華取咲桜と松生笑満ちゃん?」
 

夏島先輩がこちらを見てにっこり笑った。


「は、はい……」
 

私は怖々反応する。


夏島先輩は先生の知り合い? 降渡さんや吹雪さんの名前も出ていたし……。


夏島先輩は、私たちに向かって挨拶してきた。

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