朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「寝る。今すぐ。眠りに落ちなくても横になって目を瞑るだけでいいです。ご飯出来たら起こしますから、それまで――十分でもいいから、身体を休めてあげてください。頭と気力は動いていても、身体まで連動しないことあるんですよ。ちゃんと定期的に身体も気遣ってあげないと、すぐに壊しちゃいますよ」


「………」


「私は偽モノですが、先生の婚約者ってことになってるんです。心配と大事にすることくらい、させてください。……先生に大事な人が出来たら、ちゃんとお譲りしますから」


「―――」


「わっ?」
 

トン、と今度は軽く音を立てる勢いで、先生が私の頭に手を置いた。


「先生? 私の言ったこと聞いてました?」


「うん」
 

肯いたくせに、何故か次に頭をくしゃくしゃに撫でまわした。


「先生っ! 嫌がらせですかっ? 気に障る事言ってたら申し訳なかったですけど――」


「寝る」

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