朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「神宮です……すみません、在義さん……」
 

華取がここへ来た原因が自分であることの不甲斐無さに、声が弱気になっている。


在義さんが怖いのもあるけど、華取に面倒をかけたことが申し訳なかった。


『風邪は大丈夫なのかい? 咲桜、むしろ邪魔してはないか?』


「………」
 

在義さんが怒らず、俺の心配をしてくれた?


「はい、華取が来てくれて助かりました。ありがとうございます」


『そう、それならいいんだ。気を付けて。ただし、ね? 流夜くん』


「………」
 

嫌な汗が頬を伝う。


『そういう咲桜のおかげで元気になったんだったら……恩を仇で返すような真似は出来ないよねぇ』
 

出来るわけがありません。

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