朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「いや――少し睨まれた感はあるけど、責められはしなかったよ。言った通り雨止んだら送っていくから」


「ありがとうございます。……でも、本当に大丈夫ですか? 熱は下がったみたいですけど……」


「ああ。ほら、もう熱くないだろ」
 

こつん、と額と額がくっついた。


「………」
 

自分でやっといて硬直する俺は、まだ調子が悪いようだ。


「地下です先生。あ、違った、近いです先生」
 

華取も面には出ていないが、動揺しているようだ。


戸惑うと言い間違う癖でもあるみたいだな。


「……すまん」


「いえ。でも、本当に熱下がったみたいですね。一応風邪薬おいておきますから、また調子悪くなったら使ってください」
 

華取が言った通り睡眠をとったからか、爽快感すらある。


そうか、これが『風邪が治った状態』というものか。


勉強になった。

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