朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「ありがとう、華取」
 

礼を言うと、華取が見上げて来た。


「華取が来てくれたおかげだな」


「……なんもしてないですよ?」


「たくさんしてくれたろ。十分すぎるくらいだ」
 

なんだか華取には、思ったことをそのまま話したくなる。


新発見だった。


一方、華取の表情は驚いているようだ。


大人びた華取の、たまに見せる幼さが可愛い。


「まだ雨続いてるから、華取も一緒にメシ食ってるか。そのうち止むだろう」


「そうですね。って言っても、おかゆしかないから……ちょっと、作ったおかず持ってきますね」


「悪いな」
 

華取は、「いえ」と応えて冷蔵庫へ向かった。


……冷蔵庫がまともに機能している。


今までは飲み物突っ込んでおくしかしてなかったから、なんか冷蔵庫に申し訳なかったな……。
 

何度も華取の手料理はいただいているけど、一緒に食事をするのは初めてだ。

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