朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


俺の部屋は、私事で寝落ち確実なのでローテーブルしか置いていない。


食事中、華取はずっと正座していた。


俺は胡坐かいていて――いつもだったら食事中も私事するから、机や周りにはメシと一緒に資料が散乱している。


行儀に差があり過ぎるな……。


華取は背筋がしっかり伸びていて、箸の使い方も綺麗。


……こういうところも、がんばった結果なのだろうか。
 

夕飯を終えても雨はまだ止まなかった。


一緒に皿を洗っているとき、在義さんから華取にメールがあり、今夜は帳場ではないが泊まり込みになったということだ。


あとで吹雪に連絡して、必要があれば応援にまわらせてもらおうと決める。


……華取がいる間は、ここにいるけど。


「華取って弥栄と仲いいのか?」
 

ふと、そんなことを訊いてみた。これ、実は気になっていたことだ。
 

夕飯の片付けも終わって、華取は手持無沙汰そうだ。


俺は私事片手間になるけど、勉強でも見てやるのはどうだろう、なんて考えていた頃だ。


「やさか?」


「弥栄旭葵」


「ああ、旭葵くんですか」
 

……堂々と名前呼びするほど仲がいいのか。


思わず眉をひそめてしまう。


華取は考えるように、人差し指を顎に当てる。

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