朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


華取が縮こまるようにスマートフォンに向かっているので、むしろこちらが気になってしまう。


「えっ、でも、今先生がやってるの、学者さんとしての方なんですよね? そういうのもまずいのでは……?」
 

やっぱりそういうところを案じていたか。


「人に見られてマズいもんは頭の中に置いておくようにしてる。文字にしているのは、人に見せる必要があるものだけだ」


「………」
 

誰かに――俺の場合警察の人間やその関係者、法律関係の人間に提示する必要があるから文章化しているだけで、まだ出来上がっていない推測の域のものは頭の中に留め置いている。


だから、今パソコンの画面や紙にかかれているものは、華取に見られても問題はない。


守秘義務が関係してくるものもあるが、一応その辺りも気をつけてはいる。


「それから、先生って言わなくていいから」

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