朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】
意識してみれば、学校ではシャツの下にタートルネックのアンダーシャツを着ているようだし、家でも、署で逢った時もそうだった。
違うのは見合いの席で、着物姿だったときくらいだ。
藤城学院高校は古豪であるし、かなりの進学校だから、アルバイトやバイク免許なんかの規則は厳しい。
けれど、学内は結構自由だった。
制服も、スカート、スラックス、男女共通のネクタイを学校指定のものにすれば、ブレザーを着ずにセーターにしてもいいし、シャツ自体を指定のものと変えても注意は受けない。
のびのびとした校風、というやつだろうか。
俺が在籍した桜庭学園高校は校則規則が厳しい学校だったから、藤城は随分のびやかに感じる。
何故か急に、そんなことを思った。
ただの思い付きだから理由をつける必要もないだろうが、いつもタートルネックだと、勘ぐってしまう。
なにか首筋に傷でも――?
「華取、暑くないか?」
「ここですか?」
「いや、いつも首覆ってるから――」
俺が言いかけると、華取が顔を引きつらせた。
「……っ」
続いて息を呑む音がいやに響いた。