朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


はたと気づくと、隣の部屋との扉を開けて、咲桜がこちらを見ていた。


……起こしてしまったか。急いで降渡に言う。


「降渡、悪い。続きはまた今度でもいいか?」


『おう? いーよいーよ。大分もらったし。じゃーなー。オヤスミー』
 

切るときまで軽快だった。俺もスマホを机に置く。


「ごめん、うるさかったか?」


「いえ……すみません、私こそお電話邪魔しちゃって……」


「そろそろ切り上げたかったからちょうどよかったよ」
 

俺が言っても、咲桜は困ったように視線を彷徨わせている。


ローソファは横になれるように二人掛け用で、空いている自分の隣を叩いた。


「おいで」
 

呼ぶと、咲桜はちょこちょこした足取りで隣まで来た。


手を差し出すと、自分の手をそっと重ねて腰を下ろした。


「のど乾いてたりしないか?」

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