朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「構わないだろ? 仮だけど婚約者演じなきゃならないんだ。名前くらい呼べるようにならないと」


「だからって――」


「はい」


「…………くん」


「くんしか聞こえない」


「~~~りゅうやくんっ」
 

咲桜は、もう自棄と言った様子で呼んだ。


「よく出来たな」


「………」


頭をわしゃわしゃ撫でると、咲桜は口を尖らせた。


「大丈夫だ、咲桜」


「………」
 

からかっていた手が落ち着いて、今度は整える。

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