朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「流夜くんは私のことまで抱え込んじゃったじゃん。私だけ、一人分の問題でいいっていうのは、やだ」
 

仲間外れは嫌、みたいな、子供っぽい内容かもしれない。


それでも、咲桜が俺に対してそう思ってくれることが、やっぱり嬉しい。


「……わかった。確かに、咲桜の方だけ聞くのはフェアじゃないか」
 

観念して、目線を落とした。


咲桜は強くこちらを見て来て、片方だけ繋いでいた手にもう片方も添えた。


それに少しびっくりした俺は目線を咲桜に戻した。
 

観念した、というよりも、諦めがついた。


そして、勇気をもらった、そんな気がした。


こんなことを話すのは、本当に勇気がいるから。


……いくら俺でも。


「……俺な、家族がいないんだ」


「………」


「俺が赤ん坊の頃、殺された」

< 219 / 302 >

この作品をシェア

pagetop