朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「記憶がなくなる前はどうだったの? ってか――お母さんのこと……?」


「話した。全部、知ってることは」


「……珍しいね」


「うん……」
 

笑満は静かな眼差しで私を見て来た。


桃子母さんのことを私から話したのは、流夜くんが三人目だった。
 

一人目と二人目は同じときで、小学生の頃の笑満と頼だ。
 

でも、二人に話したのは、友達になってから三年近く経ってから。


それを、『流夜くん』とは出逢ってから数日で話してしまった。


目の前で発作を起こしたから、なのかな……? 


どうして話してしまったか、自分でもよくわからなかった。


「……目の前で発作起こしちゃった言い訳ついでだったのか、話したかったからなのか……わからない」
 

私の視線は相変わらず下を向いている。


笑満は、私が在義父さんと血の繋がりはないことも知っている。


……全部、話してある。

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